イーブーの観察日記

ハゼを中心とした雑多な記録です

神奈川の魚たち

 神奈川は私の出身地であり、18年間暮らしてきた馴染み深い土地です。しかし大学進学を機に地元を離れるまでほとんどその魅力に気づいていませんでした。今では18年間のやり残しを埋めるべく、帰省の度に地元のフィールドに繰り出しております。今日は我が地元神奈川の魚を紹介していきます。

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相模湾に浮かぶ霊峰富士 これぞ我が故郷

 本題に入る前にちょこっと脱線します。静岡から見る富士山と山梨から見る富士山どちらが美しいかという話題をしばしば耳にしますが、私は神奈川から見る富士山が一番好きです。近さこそ両県には敵いませんが相模湾に浮かぶ富士山は一見の価値ありです。皆さんも神奈川にお越しの際はぜひ富士山を眺めて見てください。

 

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ホトケドジョウ チャリ圏内にいたとは… 灯台下暗し

 さて、ここからが本題です。まずは身近な所からいきましょう。横浜駅近くや関内の辺りを見ているとアレですが、神奈川の自然もまだまだ捨てたもんじゃありません。私の実家から自転車で10分ほどの範囲にも比較的良好な環境が残された谷戸が複数あり、この周辺では神奈川県のRDBでⅠB類に指定されているホトケドジョウ Lefua echigonia が見られます。恥ずかしながら地元に18年間住んでいながら、彼の地にホトケドジョウなどがいることを大学生になるまで知りもしませんでした。遠くに憧れて身近な場所の魅力に気づかない、これほど勿体ないことはありませんね。

 

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ヒガシシマドジョウ モノクロな体色がオシャレ

 お次はヒガシシマドジョウ Cobitis sp. です。当ブログでは登場頻度低めなコイ目ですが今日はなんと2種目。私の実家周辺ではドジョウとホトケドジョウは見ることができますがヒガシシマドジョウはいません。そのため車を使ってちょこっと遠出して探しました。文明の利器に感謝。あの日はくっそ暑い猛暑日でしたが、お目当ての本種がタモに入った時は暑さを忘れて喜びました。シマドジョウ属は白黒の体色がシックな感じでいいですね。ヒガシシマドジョウを見た翌年にニシシマドジョウも見たのですが、ニシシマってデカくないですか?初めて見た時あまりにも大きいのでちょっと驚きました。

 

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ルリヨシノボリ 小振りながらも均整のとれたオス

 ここから先は神奈川のヨシノボリ。1種目はルリヨシノボリ Rhinogobius mizunoi です。神奈川では主に県西部の河川で見られます。流れの早い場所を好むようで急流の石をガサガサするとタモ網に飛び込んできます。準絶滅危惧種に指定されており、神奈川のヨシノボリの中では稀な方ではありますが、流れの早い小河川では本種が優占していることもあります。沖縄のアヤヨシノボリと同様に頬にルリ色斑点がありますがルリヨシノボリの方が斑点が綺麗な円形な気がします。またルリヨシノボリの方が圧倒的に大きいです。私が今まで見てきたヨシノボリ属魚類の中で最も大きかったのは本種で全長11.5cmほどありました。採れた瞬間は体色が黒くなっていることが間々ありますが、よく見ると頬だけでなく鱗にもルリ色の模様が入る大変美しいヨシノボリです。派手さはアヤに敵わないかもしれませんが、黒く染まった姿にはアヤにはない渋さがあります。

 

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オオヨシノボリ 貫禄たっぷりのオス 唇の重厚感

 2種目はオオヨシノボリ Rhinogobius fluviatilis です。名前の通り大型で国内最大級のヨシノボリです。ルリと同様に流れの早い場所でよく見られ、両種が同所的に見られる場所もあります。またオオヨシノボリも採れたては真っ黒なことが多い気がします。正直クロヨシノボリよりも黒いです。南西諸島のヒラヨシノボリも採れた瞬間は真っ黒だったりするので、急流のヨシノボリは黒くなる傾向でもあるのでしょうか?

 

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シマヨシノボリ 微妙な写真 今度は生態写真を撮ろう

 3種目はシマヨシノボリ Rhinogobius nagoyae です。沖縄では普通種なシマヨシ君は神奈川でも普通種です。どこでも見られる安心と信頼のシマヨシ、素晴らしいですね。そんなシマヨシですが、琉球列島の集団と九州以北の集団で遺伝的・形態的に差異があるとされています。神奈川のシマヨシは後者の集団で頬の線模様が細いです。対して琉球列島の集団では頬の網目模様が太く全体的にも派手な印象を受けます。(どうでもいいことですが、どちらかというと琉球列島のシマヨシの方が私の好みです。) 繁殖期になるとメスのお腹が青く輝きます。この時の美しさは他のヨシノボリの追随を許しません。(写真フォルダを探しましたがメスの婚姻色の写真がない、なんてこった!)記憶に残っている限りでは、シマヨシは私が人生で初めて見たヨシノボリのはずです。

 

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ゴクラクハゼ 今度帰省したらもうちょいまともな写真を撮ります

 4種目はゴクラクハゼ Rhinogobius similis です。本種もシマヨシと同様によく見られるヨシノボリです。主に河川下流域に多く汽水域でも見られます。ヨシノボリ離れした見た目をしており、属内では異質な存在といった感じです。だからこそハゼと名乗っていても違和感がないのでしょう。色の出たオスを見るまでは“地味な奴”と言う印象が強く何故ゴクラクなのかがよく分かりませんでしたが、最近ようやくゴクラクハゼの極楽たる所以を感じることができました。普通種全般に言えることですが、ゴクラクハゼのまともな写真がフォルダ内にないです。(他種の写真がまともと言う訳でもありませんが…)“また今度見られるからいいか”と先延ばしにしてしまう癖を直さねば。

 

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クロヨシノボリ 沖縄にいると有り難みが薄れてくるけどやっぱいい魚だなぁ

 5種目はクロヨシノボリ Rhinogobius brunneus 。以前にも少し紹介した気がするのでここではサラッと。ルリヨシノボリが主に県西部で見られるのに対して、クロヨシノボリは県の東部の小河川に多いです。この2種が神奈川のレアキャラ系ヨシノボリって感じがします。しかしクロヨシパラダイスみたいな場所もあり、1ガサで何匹もタモ網に入るなんてこともちょいちょいあります。

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クロダハゼ 小っちゃくて吻が短い かわいい

 神奈川のヨシノボリ、ラストを飾るのはクロダハゼ Rhinogobius kurodai です。ゴクラクハゼの他にもう一種ハゼを名乗るヨシノボリ、それがクロダハゼ。ゴクラクハゼは許せるけどクロダハゼは何かしっくり来ません。だからと言ってクロダヨシノボリではクロヨシノボリと紛らわしいし違和感しかない。名前はさておき、このクロダハゼは今までの5種とはだいぶ趣向が異なります。本種はため池やワンドなどに生息するとされています。似たような環境に生息する種としては西日本のシマヒレヨシノボリなどがいます。このような池沼に生息するヨシノボリは小型で吻が短いものが多く大変可愛らしいです。

 

 神奈川の魚と銘打っておきながら結局ヨシノボリばかりになってしまいました。ヨシノボリ以外も底物で私の好みがもろバレですね。好きなものは好きなんです。どうしようもありません。