普通種に栄光あれ! Part 2
最後の更新はなんと2年前。日記などと題しておりますが、もはや年報ですらありません。この空白の2年間に大学院修了、就職など様々なことがありましたが、このブログにはあまり関係のないことです。という訳で本題に移ります。
今回は、普通種たちにスポットライトを当てる企画Part 2です。Part1から855日も経ち、今の居住地では全くもって普通種ではありませんが、このままいきます。
今日の主役はハスジマハゼ Cryptocentroides insignis です。本種の和名は、体側に入る斜めの縞模様に由来しており、上皇陛下が執筆された論文により提唱されました。まさにロイヤルなハゼなのです。体全体に青斑点が散らばり、胸鰭、腹鰭、臀鰭外縁には金粉をまぶしたような模様があり、見た目もロイヤルです。
そんなハスジマハゼは、奄美大島以南の琉球列島に分布しており、河川河口域やその周辺の海岸などで見られます。私がかつて住んでいた沖縄島においては、北部の自然度の高い河川から、中南部の人工的な排水路まで、様々な場所で多くの個体を見ることができました。
このハゼとの出会いは約6年半前、当時はまだ10代でした。学部1年の春休み、F先輩に連れて行っていただいた某川で初採集。散りばめられた青い煌きに驚いたあの日も遠い過去、地理的にも遠いハゼとなってしましました。
普通種に栄光あれ! Part 1
ついに終わってしまいましたね、上半期。皆様にとってこの半年間はいかがだったでしょうか? 私事ですが、この半年の間に就職活動も一先ず無事に終えることができ、来年度から社会人としとして生きていくこととなりました。学生でいられる時間、そしてこの沖縄にいられる時間もあと9か月ほど、残された時間を大切に、悔いの無いように過ごしていきたいものです。
さて、沖縄生活に終わりが見えてきた中、私はあることに気が付きました。なんと、私の標本写真フォルダには、ありふれた普通種達の写真があまり無いのです。いつでも見られる、いつでも採れるし撮れる、そんな慢心が招いた由々しき事態、この沖縄を離れる前に何としても解消しなければなりません。ということで、最近は今まで先延ばしにしてきた普通種たちの標本作成に力を入れております。そこで今回からしばらく、沖縄のハゼたちの中でも、ごくごく普通に見られる種に注目していきたいと思います。題して”普通種に栄光あれ!”です。
記念すべき第1回目のハゼは、カマヒレマツゲハゼ Oxyurichthys cornutus です。
本種は、その名の通り眼の上にまつ毛のような皮弁を持ちます。また、第一背鰭は鎌のように長く伸長します。沖縄の河川河口域の泥底の干潟において最もよく見られる種の一つです。干潟で採れた直後は泥にまみれていることも多く、地味なハゼと言う印象が強いですが、よく見ると背鰭や尾鰭の模様は中々にサイケデリックな感じですね。鰭を立てて写真を撮る、この二手間を経ることで得られる新たな感動です。
私がカマヒレマツゲハゼに出会ったのは今から約3年半ほど前、一人なんとなく立ち寄ってみた干潟でガサガサしているとたも網の中にこのハゼが入りました。ヒラヒラと大きな鰭、目玉の上に生えた角のようなもの、干潟のハゼを知らない私はこの異形のハゼを家に連れて帰り、図鑑で調べました。この日はフタスジノボリハゼなど初見の泥ハゼが複数採れており、この干潟歩きが私を干潟という深い沼に突き落としたと言っても過言ではありません。
あのハゼにもこのハゼにも、それぞれに思い出があり、語ることのないハゼなんてものはいないのかもしれません。そんなハゼ達も、数多のフィールドを経る中で、出会った頃の新鮮な気持ちが薄れ、いつでも見られるからと蔑ろにするようになってしまう、なんだか寂しいものです。そんなわけで、こうして今一度原点に立ち返り、愛すべき普通種たちにスポットライトを浴びてもらおうと思ったわけです。
ということで、短いですが今回はここまで。次回も普通種たちについてぼちぼち書いていこうと思います。
”一針入魂” 思い出のハゼに思いを込めて
2021年ももうじき半分が終わってしまいますね。実に色々なことが起きた怒涛の半年間でした。なんだかんだやっているうちに前回の更新からだいぶ経ってしまったので、久しぶりに更新したいと思います。
今回は何か目新しいハゼが採れたわけではありません。とあるハゼのちょっと綺麗な写真が撮れたので、少し紹介したくなったのです。そのとあるハゼとはアカボウズハゼ Sicyopus zosterophorus です。当ブログでは何度も登場しているおなじみのハゼですね。以前にも書いた気がしますが、このハゼは私にとって実に思い出深いハゼなのです。4年前、当時まだ10代だった私を川に引きずり込んだ1匹との出会い。それから幾度となく川の中で相見えてきたアカボウズハゼ。そんな思い出のハゼに、今の私が持てる全身全霊を注ぎました。
短いけどおしまい。
渓琉戦隊ノボレンジャー
最近オンラインG学会に向けた発表準備に追われ、私のただでさえ小さい脳が委縮気味なので、ネタ回を書いて気分転換です。今回は琉球列島の渓流に生きる逞しき戦士達をおふざけ半分で紹介します。題して "渓琉戦隊ノボレンジャー" です!
戦隊モノの主役といえばレッド、トップバッターはノボレッドことアカボウズハゼ。炎の如き真っ赤な体、沖縄の川では主に上流域でよく見られるこのハゼ。たとえ行く手に滝や堰があろうとも、燃え盛る遡上能力でノボっていく、ノボレンジャーの頼れるリーダー。夏場は凛々しい姿だが、寒くなるといまいちヤル気が出ないご様子。
お次はクール系、ノボレブルーのヨロイボウズハゼ。渓流の定番メンツ、激流に負けず岩盤にしがみ付くストイックな奴。レッドに比べて若干遡上能力が劣るのが実はコンプレックス? しかし、そんな心は鎧の内に秘めて今日もノボるブルーなのだ。
3番手はノボレンジャーの影のリーダー? 琉球列島最強クラスの遡上能力を誇る、漆黒の戦士ノボレブラックことクロヨシノボリ。どんな急峻な河川でもノボり、上流域を我が物顔で占拠する、まさに遡上の鉄人。こんな所にもいるのか!?と、しょっちゅう驚かされる。
4番目は、実はそんなにノボれない? ノボレウィング、ツバサハゼ。その名の通り、翼のような鰭を持つツバサハゼ。その翼で華麗に渓流をノボりそうなものだが、案外ノボれないらしい。しかし、その個性的な魅力はノボれなさを補って余りあるものだ。
最後は生まれながらのノボレンジャー。海には下らない孤高の戦士ノボレイエローことキバラヨシノボリ。イエローは海には下らない。生まれた時から滝の上で過ごし、死する時も滝の上。最早ノボる必要すらない、究極のノボレンジャー。イエローの領域には然しものブラックですら中々手出しができない。
しょーもない記事ですが、今回はこれでお許しください。またいつか更新します。
キジムナー再び
ここ最近干潟ネタが続いたので今回は川のハゼでいきます。今日のハゼは昨年の秋頃にも当ブログに登場したキジムナーこと赤いヨロイボウズハゼです。
昨年の9月に見て以来、また見ることができないかと探していたのですが、今年は中々ヒットせず外し続けておりました。ヨロイボウズハゼは流れの速い瀬に多く見られ、そのような場所は大抵水深が浅く、観察の際には匍匐前進のような格好になるため背中や首がとても疲れます。最近運動不足な私にとっては中々のダメージです。悲鳴を上げる骨に鞭打ちながらこの日も川の中を進むものの目当てのハゼは現れず、今回は無理かなと諦めかけていたその時、ふと顔を付けた瀬の中に赤い何かが…
やっと出ました。昨年見た2個体よりも朱色な感じです。腹部周辺も以前見たものより青みが強くカッコいい!しかし、警戒心が強めなようでカメラを向けるとそっぽを向いて逃げてしまいます。逃げるハゼを必死に追いかけながらシャッターを切りました。
ギンギンに発色しているだけのことはあり、周囲のハゼたちに威嚇しまくりです。ピンボケな写真ですが近くのナンヨウボウズハゼに威嚇する姿を撮りました。当のハゼ達は必死なのでしょうが、小さなハゼ達の動きはなんだかコミカルで、見ているだけで心が和みます。急流の中、暫しハゼの尻を追いかけていると、突然向こうから青い奴が突進してきました。
自らのテリトリーにやってきた赤い侵入者に激怒したナンヨウボウズハゼの雄が、鰭を真っ黒にしながらシュバって来たようです。手前に写っているのも同じナンヨウボウズハゼの雄ですが、こちらはヤル気が無いらしくボケっとした色です。キジムナーとナンヨウのバトル!これはアツいぞ!と固唾を呑んで見守る私。果たして勝負の行方は…
ナンヨウボウズハゼの剣幕に気圧されたのでしょうか、なんとキジムナーが何の抵抗も見せず敵前逃亡してナンヨウの不戦勝。侵入者を追い払ったナンヨウは、尚も威嚇を止めません。ナンヨウボウズハゼが威嚇や求愛をする際は、ジグザグ素早く泳ぎながら行われることが多く中々綺麗に写真を撮れません。しかし、今回は珍しく静止したまま鰭を全開にしていたので絶好のシャッターチャンス。個人的にお気に入りの1枚を撮ることができました。もっと沢山のハゼ達のベストショットを撮るべく、これからも川に通いたいですね。
短いですが今日はここまで。次は何について書くか未定ですが、そう遠くないうちに更新したいです。