サンゴの隙間
川のハゼ、干潟のハゼと続いてきたのでここらで海のハゼについて書こうかと思います。沖縄と言えば川でも干潟でもなくエメラルドグリーンに輝くサンゴ礁の海、多くの人がそう思うことでしょう。私自身沖縄に来たばかりの頃はそう思っていました。今日はそんな沖縄の海のスーパースターである“サンゴ”ではなくサンゴの隙間に住み着く“ハゼ”を紹介しようと思います。
トップバッターはアイコバンハゼ Gobiodon micropus です。私が沖縄の磯で初めて出会ったコバンハゼ属魚類はアイコバンハゼでした。とある夜の磯でテーブル状のミドリイシの枝の隙間を覗いたら小さなハゼが数匹潜んでいました。指ではとても引っ張り出せそうになかったので、近くにいたウニからトゲを2本拝借してピンセット代わりにしてつまみ上げました。出てきたのは青ぽっくて頭の丸い謎のハゼ、家に帰って調べてみるとアイコバンハゼであるということが分かりました。これが私とコバンハゼ属との出会い。この日以降、磯に行くたびにサンゴの隙間を覗き込んでコバンハゼを探すようになりました。
赤茶色の体色と眼の周りのブルーのコントラストが美しいクマドリコバンハゼ Gobiodon oculolineatus はアイコバンハゼに次いで見かけることの多いコバンハゼ属魚類です。アイコバンハゼとクマドリコバンハゼ、それぞれ同種同士で集まっていることが多く、1つのサンゴに両種が同居している姿はあまり見ません。好むサンゴの種類が違うのか何なのか気になります。
次はザ・コバンハゼ Gobiodon sp. です。コバンハゼは同属他種に比べて圧倒的にデカいです。私も初めて見たときはそのデカさに驚きました。一見地味なハゼですが、眼の両側や胸鰭基部、背中に入るブルーのラインが結構お洒落です。私は今のところ沖縄島の1箇所でしか本種を確認出来ていないのでもっと色々な場所で見つけたいです。
この全身茶褐色なのはムジコバンハゼ Gobiodon unicolor 種小名もそのまんまって感じですね。久米島のとある磯で見つけました。残念なことに、この個体が住んでいたサンゴは翌年見に行った時には白化して死んでいました。サンゴに寄り添って生きるコバンハゼ属魚類にとってサンゴの白化は大きな脅威です。コバンハゼの仲間だけでなく多くの生命を育むサンゴ礁が末永く健全に保たれることを願っております。