イーブーの観察日記

ハゼを中心とした雑多な記録です

普通種に栄光あれ! Part 1

 ついに終わってしまいましたね、上半期。皆様にとってこの半年間はいかがだったでしょうか? 私事ですが、この半年の間に就職活動も一先ず無事に終えることができ、来年度から社会人としとして生きていくこととなりました。学生でいられる時間、そしてこの沖縄にいられる時間もあと9か月ほど、残された時間を大切に、悔いの無いように過ごしていきたいものです。

 さて、沖縄生活に終わりが見えてきた中、私はあることに気が付きました。なんと、私の標本写真フォルダには、ありふれた普通種達の写真があまり無いのです。いつでも見られる、いつでも採れるし撮れる、そんな慢心が招いた由々しき事態、この沖縄を離れる前に何としても解消しなければなりません。ということで、最近は今まで先延ばしにしてきた普通種たちの標本作成に力を入れております。そこで今回からしばらく、沖縄のハゼたちの中でも、ごくごく普通に見られる種に注目していきたいと思います。題して”普通種に栄光あれ!”です。

 

 記念すべき第1回目のハゼは、カマヒレマツゲハゼ Oxyurichthys cornutus です。

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尾柄が歪んでいるのには目を瞑ってください。

 本種は、その名の通り眼の上にまつ毛のような皮弁を持ちます。また、第一背鰭は鎌のように長く伸長します。沖縄の河川河口域の泥底の干潟において最もよく見られる種の一つです。干潟で採れた直後は泥にまみれていることも多く、地味なハゼと言う印象が強いですが、よく見ると背鰭や尾鰭の模様は中々にサイケデリックな感じですね。鰭を立てて写真を撮る、この二手間を経ることで得られる新たな感動です。

 私がカマヒレマツゲハゼに出会ったのは今から約3年半ほど前、一人なんとなく立ち寄ってみた干潟でガサガサしているとたも網の中にこのハゼが入りました。ヒラヒラと大きな鰭、目玉の上に生えた角のようなもの、干潟のハゼを知らない私はこの異形のハゼを家に連れて帰り、図鑑で調べました。この日はフタスジノボリハゼなど初見の泥ハゼが複数採れており、この干潟歩きが私を干潟という深い沼に突き落としたと言っても過言ではありません。

 あのハゼにもこのハゼにも、それぞれに思い出があり、語ることのないハゼなんてものはいないのかもしれません。そんなハゼ達も、数多のフィールドを経る中で、出会った頃の新鮮な気持ちが薄れ、いつでも見られるからと蔑ろにするようになってしまう、なんだか寂しいものです。そんなわけで、こうして今一度原点に立ち返り、愛すべき普通種たちにスポットライトを浴びてもらおうと思ったわけです。

  ということで、短いですが今回はここまで。次回も普通種たちについてぼちぼち書いていこうと思います。