イーブーの観察日記

ハゼを中心とした雑多な記録です

キララハゼ属 ver.2.0

 昨日ペースを上げると書きましたので早速更新します。今回は、今から1年と8か月ほど前にちょこっと紹介したキララハゼ属について何種か追加で写真を載せてみたいと思います。

 まずは以前にも紹介したセイタカスジハゼ Acentrogobius signatus の追加写真から。以前の記事では観察ケースに入れた写真でしたが、今回は標本写真です。このブログを開設した当時は、卒業研究以外の標本をあまり作っていなかったのですが、現在は日頃見かける種類も時間が許す限り標本として残すようにしています。

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見方を変えれば新たな魅力が見えてくる?

 私の拙い展鰭および撮影技術では、ハゼたちの持つ魅力を全て引き出すことはできませんが、観察ケースに入れて見た時とは一味違った姿に見えます。以前は気づかなかったのですが、第二背鰭に黄色い模様が入っており、生時よりもカラフルな印象を受けます。しかし、前回のハラマキハゼ同様、青色はかなり薄れてしまっています。この点は今後改善策を模索していきたいところです。

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尾鰭が上向きになってしまった。

 次はフタスジノボリハゼ A. moloanus です。ノボリハゼと名前にありますが、ノボリハゼ属ではありません。また、フタスジを名乗ってはいますが、そこまで二筋には見えないような気もします。なんだか神聖ローマ帝国みたいです。

 実はこのハゼ、私が干潟にハマるきっかけの一つとなったハゼでもあります。大学2年の春休み、とあるハゼを探している最中に偶然泥の中からこのフタスジノボリハゼを見つけました。その時私は、こんな泥の中から斯くも美しきハゼが採れるのかと驚嘆するとともに、今まで食わず嫌いをして干潟を避けてきた自身の愚かさを恥じました。今となっては、干潟は様々なフィールドの中でも特によく行く場所となっていますが、この時の出会いがなければここまでのめり込むこともなかったのかもしれません。何がどのように繋がるか分からない人生、面白いものです。

 さてお次はホホグロスジハゼ A. suluensis です。このブログで前にも見た、と思う方がいるかもしれませんが、そちらはツマグロスジハゼ Acentrogobius sp. です。ツマグロスジハゼは腹鰭先端が黒く縁どられるのが特徴ですが、今回紹介するホホグロスジハゼは、名前の通り頬 (鰓蓋) に黒い斑点が入るのが特徴です。

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頬は黒いけど、腹は黒くない。

 写真の個体はおそらく雌で少し地味な感じですが、雄は各鰭がより鮮やかに色づき、属内でも屈指の美麗種だと勝手に思っています。ご多分に漏れず体側の青色が褪せてしまっていますが、鰓蓋付近の色は比較的綺麗に残ったように見えます。

 以前のキララハゼ属についての記事で、このホホグロハゼが見たいと書いておりましたが、最近ようやく見つけることができました。沖縄県RDBによると個体数は少ないとされ、準絶滅危惧種に指定されていますが、最近見つけたとある干潟では比較的多くの個体が見られました。今まで他の干潟では採れたことがなかったので、何かピンポイントで好む環境があるのかもしれません。いずれにせよもっと多くの地点で見てみたいハゼです。

 さて本日最後のハゼはニセツムギハゼ A. audax です。本当は標本写真を撮りたかったのですが、バケツに入れてキープしていた際にうっかり蓋を閉め忘れ、その隙に飛び出していってしまいました。今後このような事故が無いよう要反省です…

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偽物とは失敬な。

 名前だけ聞くとツムギハゼのパチモンって感じがしますが、実際に見てみると全く別物だなと私は感じました。ニセツムギハゼの方が優しい顔をしていると思います。ツムギハゼは頭でっかちで凶暴そう。また、体側の黒斑も異なり、ツムギが大きな点が3個なのに対してニセツムギは小さな点が5個あります。加えてキラキラ感も段違いです。ニセツムギハゼには水色の点が体の随所に散りばめられておりゴージャスな感じ。これを偽物呼ばわりとは、ニセツムギハゼは怒っているかもしれませんね。もちろんツムギハゼをdisるつもりはありませんよ。十鯊十色、みんなちがってみんないい。

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元祖の魅力、刮目せよ!

 参考までに以前採ったツムギハゼの写真も載せて今日は終わりにしようと思います。次もそう遠くないうちに更新できるようにしたいです。