イーブーの観察日記

ハゼを中心とした雑多な記録です

やんばるの森のキジムナー

 台風17号思っていたより強いですね。一時は沖縄島中南部を中心に4万戸以上が停電していたようですが、幸いにも我が家は無事でした。停電はせずとも外は大荒れの天気で家に籠るほかないので、この放置ブログを更新しようと思います。

 今日紹介するのはキジムナーです。キジムナーと聞いて多くの人がイメージするのは精霊のほうでしょうか。樹木 (主にガジュマル) に宿る精霊とされ、人に悪戯をしたり、魂を奪うなどの恐ろしい伝承がある一方で、人と友達になったり、漁を手伝うなど友好的な面もあるようです。また、魚の目玉が好きだったり、屁を嫌うなどちょっと変わったところもあるなんともキャラの濃いやつです。容姿についても様々な言い伝えがあるようですが、現代のマスコットキャラクターとして描かれているキジムナーの多くは髪が赤い子供の姿をしています。

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キジムナー イーブー渾身の作

 嘘だと思われるかもしれませんが、実は私キジムナーと思しきモノを森の中で見たことがあるのです。2年前のある日、やんばるの川でハゼを探して歩いていた時、対岸の方からガサガサと藪を掻き分けるような音が聞こえました。ここは人跡まれな谷の底、まさか人などいるはずがない、イノシシだろうか… と顔上げてみると、なんと対岸の急斜面に歩く人影が見えたのです。薄暗い森の中でその顔をはっきりと見ることはできませんでしたが、間違いなく人の形をしていました。私が呆気に取られている間にその影は藪の中へと消えたらしく、気が付くと見えなくなっていました。ここが崖に挟まれた川でなければ、きっと人だろうと思えるのですが、その影が歩いていたのは立っているのも難しいような急斜面、いったい何者だったのか… 個人的にはロマンのあるキジムナー説を推していきたいところですが、生き物屋さんだったりして。

 さて、沖縄には精霊の他に川に住むキジムナーもいるのです。こちらは伝説上の生物ではなく実在する生物です。そしてその正体は…

 

 

 

 

 

 

 

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川の中のキジムナー

なんとハゼなんです。前回の投稿でも登場したヨロイボウズハゼです。通常のヨロイボウズハゼは雄の頭部と腹部が青緑色を呈するのですが、稀にこのような赤色ものがいます。この特徴的な赤い顔から、キジムナー、酔っ払いなどの愛称で呼ばれることがあります。通常のヨロイとの関係を含めまだ明らかでないことの多い謎に満ちたハゼです。沖縄生活4年目にしてやっとその姿を拝むことが出来ました。ありがたや。

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もう1匹登場!

そしてこの日はなんとキジムナーが2匹も現れたのです。2匹目の方が1匹目よりも発色が強くてカッコいい!このキジムナー、真っ赤な顔も素敵なのですが、それ以上に黒く縁どられた赤い第二背鰭が最高にクール。いや実に良いハゼです。素晴らしいハゼは人の語彙力を著しく低下させますね。しかし、初キジムナーが2匹同時に現れるとは思ってもみないことでした。やんばるの川でひっそりと暮らすキジムナー達に感謝です。

 今回キジムナーを見たことで、沖縄島から報告されているボウズハゼ類のうち私がまだ見ることが出来ていないのはトラフボウズハゼとギザギザボウズハゼの2種となりました。いつの日か全種コンプリート、そしてまだ見ぬボウズハゼ類との出会いを目指してこれからもガンガン川へ繰り出して行きたいです。